私は2年生になって、大阪に引っ越してきた。中途半端な時期だったから、結構不安も多かった。でも、この学校のみんなはすごくいい人ばかりで・・・。すぐに慣れることができた。
・・・それに。大切な人とも出会えた。



「あ、先生!おはようございます!」

「お。おはようさん。今日も元気そうやなぁー、。」

「はい、もちろんです!私は元気だけが取り得みたいなものですから。」

「いやいや、そんなことはないやろー。それに、元気が何よりやで!そやから、1コケシやろう。お、やろう。」

「やったー!ありがとうございます!」

「うん。・・・ほな、今日も1日頑張りやー。」

「は〜い!」



私は笑顔で先生を見送る。
ここで出会えた大切な人の1人が、この渡邊先生だ。転校当初、いろんなことで助けてもらった。簡単な案内とかもしてもらったし・・・。何より、会えばすぐ、気軽に声をかけてもらえたのが、この学校でも独りじゃない、味方になってくれる人が居るんだって思えて、すごく気が楽になった。
今でも、こうして私を覚えていて、少し気にかけてもらっている。だから、私は先生のことが大好きだ。



「朝からホンマ、健気やなぁ〜・・・!」

ちゃん!おはよう。」

「おはよーさん。」



そして、今同じクラスのちゃん。彼女も私にとって大切な人だ。
気さくなちゃんは、このクラスに引っ越してきた私と1番最初に仲良くなってくれて・・・。決して、転校生が物珍しかったなんて理由ではなく、今でもちゃんと友情が続いている。だから、私はちゃんのことも大好きだ。



「もう・・・!ホンマにアンタはええ子やなぁ・・・!!」

「わっ、急にどうしたの?ちゃん!」

「ええねん、ええねん。気にせんとって。ただ、その笑顔が可愛いだけや・・・!」

「その・・・って、この状態で顔なんて見えないでしょ?」

「ナイスツッコミやな!」



そう言いながら、突然抱きついてきていたちゃんがすっと離れた。こういう明るくて、元気なちゃんは本当素敵な人だ。



「ホンマに・・・。なんで、オサムちゃんなんか・・・。」

「ん?」

「ええか、!世の中には・・・いや、この学校の中だけでも、ぎょーさん男が居る!そやから、何もオサムちゃんやなくても・・・・・・。」

「うん、わかってるよ。ありがとう。」

「あぁ、そうやな・・・。何言うても無駄やな・・・。そやったら、せめてうちを頼ってや?うちはマネージャーやねんから、オサムちゃんの好きなモンや嫌いなモン、何でも調べたるから!」

「大丈夫、ありがとう。」



ちゃんの言うように、先生の好きなものを聞いて、それをプレゼントすれば、少しは先生に良く思ってもらえるかもしれない。実際に、先生のことが好きで、そう考えている人も居ると思う。
だけど、私は違う。最初、そんな考えに至らなかった私は、みんなよりも想いが弱い、あるいは小さいから、そうなったんじゃないかとも思った。でも、きっと、そうじゃない。人を好きになるのに、勝ち負けは無い。好きなら好き、それでいいんだ。
だから、私は特に何かをするつもりはなかった。人を好きになれた、それだけで充分幸せなんだ。



「・・・しゃーない。うん、わかった。そやけど、いつでも相談してや?」

「ありがとう。・・・それじゃ、そろそろ教室に行こっか。」

「そやな!」



それに、私にはこうして支えてくれるちゃんが居る。すごく有り難いことだよね!
こうして、ようやく教室に向かった私たち。すると教室に入ってすぐ、もう1人、私にとっての大切な友達に会った。



「あ、財前くん。おはよう。」

「・・・あぁ、か。」

「・・・。財前やったらアカンの??」

「え?」

「そやから、さっきの話!いや、わかってんで?どうせ、はオサムちゃんなんやろうけどな。それでも、いっぺん考えてみて?」



さっきも言ったように、財前くんは私の大切な友達。まさか、好きにはならないよ。それに・・・。



「私には勿体ないよ。・・・もちろん、先生もそうだから、私は何もするつもりないんだけどね。」

「あぁ!もう・・・。そやから、なんで、アンタはそんなに健気なんや・・・!!財前なんて薦めたうちが悪かった!こんな奴に、は勿体なさすぎる!!」

「おい、。勝手に薦めて、勝手に否定すんな。」

「ごめんね、財前くん?」

「別に、が謝る必要は無いって。」

「ホンマや!はええんやで??」

、うるさい。ちょっと黙っとけ。」

「何やと〜?!」

「そやけど、。」



私の横で文句を言っているちゃんを無視して、財前くんは私に問いかけた。・・・もちろん、これは財前くんなりの優しさだ。



「選りにも選って監督やなくてもええとは思うで。」

「そう言われても、そうなったものは仕方ないでしょ?」

「そうかもしれんけど・・・。そやったら、せめて行動したら?見てるこっちがイライラするわ。」

「ちょっと、財前!ホンマ、アンタは言い方ってモンを知らんなぁ・・・!!」

「いいんだよ、ちゃん。それに、ありがとう、財前くん。でも、私は先生とどうにかなりたいって思ってるわけじゃないから。これでいいんだよ。」

「・・・・・・そうか。」

「うん!」



また、最後も呆れたように言い残すと、財前くんは自分の席へと戻って行った。



「まったく・・・。財前の奴・・・!」



隣でちゃんが怒ってくれているけど・・・。結局は2人とも、私の心配をしてくれてることに変わりない。だから、態度は違えど、私は2人に感謝している。
・・・でも、そう思えるのも、たぶん先生のおかげだ。本当なら、あんな財前くんの態度、恐いと思ってしまうだろう。だけど、これも転校当初に先生が話してくれたんだ。



『7組ってことは・・・・・・と財前と同じクラスやな。は、まぁ面倒見もええし、どんどん頼ったらええと思うで。んで、財前やけどなぁ・・・。アイツはちょっとわかりにくいんや。たぶん、えらい冷たく感じるかもしれんけど、決してのことが嫌いなんとちゃうからな?そやから、仲良うしたってな。』



そう言われていたから、私も財前くんの本当の優しさに気付くことができた。

やっぱり、先生にはいろんなことを教えてもらってる。だから、私は先生のことが好きなんだ。・・・この恋する気持ちだって、先生に教えてもらったことの1つと言えるかも。つまり、私にとって先生は、私の世界を明るく照らしてくれた存在、なんだよね。
そんな先生に迷惑はかけられない。先生の世界を壊すことはできない。だから、先生に想いを告げることはしないし、それを気取られるような行動もしない。
・・・・・・でも、先生に感謝は伝えたい。たくさんのお礼が言いたい。その中には、先生を好きになって幸せな日々を送れることへの気持ちも含まれる。
う〜ん・・・・・・、矛盾してしまった。
だから、せめて迷惑にはならないよう、卒業の日には、自分の想いを伝えようかと思った。・・・・・・それをちゃんや財前くんに説明したら、納得してくれるかもね!

でも、卒業まではあと1年もある。それまでは、今まで通りにやっていくんだ。



「あ、渡邊先生!今から部活ですか?」

「そや。そう言うは、今から帰りか?」

「はい。まだ部活は決めてないので・・・・・・。」

「そうか・・・。じゃあ、テニス部マネージャーなんて、どうや?と財前とも仲良うやっとるみたいやし、ええんちゃうか?」

「そうですねー・・・・・・。それもいいかもしれませんね!考えてみます。」

「いつでも待ってんで?ほな、今日は気ぃ付けて帰りやー。」

「はーい!ありがとうございます。さようなら、先生!」

「はい、さようなら。また明日も、遅刻せんようになぁ〜!」

「大丈夫です!」



ひらひらと手を振る先生の後ろ姿に、私は一礼した。
遅刻なんてするわけがない。だって、こんなに楽しい学校なんだもの。
それに加えて、部活動か・・・。先生に提案してもらって、それもありかなって思った。だって、マネージャーってことは、少しぐらい先生の役に立てるだろうし、恩返しになるかもしれないと思ったんだよね。
自分の想いは伝えず、先生に感謝の気持ちは伝えられる・・・・・・うん、やっぱりこれは妙案だ!さすが、先生。またお礼を言わなくちゃ。

渡邊先生、本当にありがとうございます。そして・・・・・・、大好きです!













 

前回、上手くいった渡邊夢を書いたので、今回は上手くいかない感じを書いてみました。やっぱり、先生と生徒じゃ難しいですからね〜・・・。と言いつつ、実はこの話、渡邊先生側も少し気になっているという設定ですが(笑)。
なので、気が向けば、卒業式のお話を書いてみようかなぁ〜とも思っております。

でも、一応は片想いのお話です。私としては、恋が叶わないのはつらいことだけど、人を好きになれたこと自体がすごく幸せなことだと思うのです。最近、恋をしていないので、強くそう思います!(笑)
だから、片想いをされている方は、苦しいときもあるとは思いますが、好きだって気持ちを大事にしてほしいと思いますっ!(←何の話??/汗)

('10/03/04)